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DX白書2021が発刊されました(3) ~データ利活用を前提とした経営を!

  • 2021年11月19日
  • 中小機構 中小企業支援アドバイザー  吉田明弘
  • DX白書2021
DX白書2021イメージ画像

2021年に初めて発刊されたDX白書2021の内容を、全4回に分けて紹介しています。
白書の第4部「DXを支える手法と技術」では、DXを進めるうえで重要となる手法と技術に言及しています。その前半となる第1章ではITシステムの内製化に伴う開発手法や技術について、後半の第2章ではデータ利活用技術についてまとめています。
中小企業・小規模事業者にとっては、ITエンジニアを確保して内製化を進めることよりも、データ利活用の方が喫緊の課題となり得るので、この連載コラム第3回では、データ利活用についての記載を取り上げます。

(1)経営は創造的な仕事をしている!?

まず、経営におけるデータ利活用の位置づけが日米でどのように異なるのかという調査結果が示されています。
目的を把握した上でデータ収集をしていると答える日本企業は、米国企業に比べて顕著に少なく、「十分できている」「まあまあできている」の2つの選択肢を合わせた割合は、日本企業33.3%、米国企業85.4%でした。

 

また「データ分析活用担当の上級管理職を任命(Chief Data Officerなど)」や「データ分析を組織横断的に推進する組織の設置(Center of Excellenceなど)」を実施していると答える日本企業も、米国企業に比べて顕著に少ないです。

 

白書では以下の記載がされています。

「日本企業では、データ分析を活用するための組織的な取組の重要性に対する認識が低いと推察される。」(第2部第4章P.65)

経営者自らが主体的にデータを扱いたいならば、経営の視点でデータを扱う仕組みを整えるはずですし、目的をもってデータを収集するはずです。現場から半ば自動的に報告されるデータを「判断する」だけでなく、経営の意図をもって収集したデータに向き合わなければ、データ活用においては、経営者が創造的な仕事をしているとは言えないでしょう。

(2)改善サイクルを回すために・・・

ここで一旦、白書から離れて、事業を改善するサイクルについて考えてみましょう。
例えば、売れ筋の商品をより多くの顧客に知ってもらいたい(顧客体験の向上)と考えたならば、どれが売れ筋の商品なのかを知らなければならないでしょう。商品別の販売数量などを確かめることになりますが(データ分析)、もし普段から販売数を記録していなければ(データ収集)、それが叶いません。POSなどによってデータが残っていれば、そこから売れ筋の商品を確認して、その商品が目立つように店内のレイアウトを変えていくでしょう(変化)。

その後、実際に狙った通りの顧客体験が作れたのかを確認するためには、やはりデータを見ていくことになります。そこで万が一、狙った効果が得られていなかったならば、また違った変化を生み出していく必要があるでしょう。

 

このように、データ利活用は改善サイクルの根幹に関わります。
しかし、もし全てのデータを手書きでノートに記録していたら、記録するのも分析するのも大変です。データを扱うためだけに1日に何時間も使っていたら、接客や改善活動そのものに十分な時間を使えません。
つまり、データの利活用を進めるには、データ収集とデータ分析を省力化することが重要になります。逆に考えれば、データ利活用を効率的に進める仕組みを構築できたならば、ゆとりを持ちながら、改善サイクルを高速化することができ、顧客体験を向上できる可能性が高まります。
ここで白書に戻ると、データ利活用技術を紹介している第4部第2章で、Walmart社の事例について、以下のような文があります。

「最終的にはデータの活用によって、AIを導入した店舗では、朝、売り場のドアが開く前に補充のタイミングと量を知ることができるようになるという。では、食品・製品の補充のための見回りが必要なくなった店員は何を行うのか。Walmartでは、皆が口をそろえて言う、「よりきめ細やかな接客です」。」(第4部第2章P.236)

白書では、大量のデータから事業にとって意味のある情報を得るための技術としてAI(Artificial Intelligence)技術、そして大量のデータ収集を自動化・省力化するための仕組みとしてIoT(Internet of Things)技術について述べています。以下、日本企業がその2つのデータ利活用技術をどのように活用できているかを見ていきましょう。

(3)日本におけるAIの夜明け?

まず、AIの活用状況です。
日本企業の「全社で導入している」という回答が、米国企業に比べて極めて少ないのが目に付きます。また反対に「関心はあるがまだ特に予定はない」「今後も取組む予定はない」という回答が半数程度を占めるなど、日本ではAIの利活用がまだまだ進んでいません。

 

ただし、2019年~2021年の経年比較を見ると、直近は日本企業にもAIが急激に浸透してきていることは見て取れます(こちらのグラフでは「全社で導入している」「一部の部署で導入している」が合わせて「導入している」になっていることに注意)。

 

また、日本企業におけるAI導入課題の経年比較を見ても、「自社内でAIへの理解が不足している」「手軽に導入できる製品・サービスがない」「導入効果が得られるか不安である」の3項目が年々減少してきており、ここでもAIの浸透している様子がデータに表れています。一方で「AI人材が不足している」が直近で急に高まっており、AI利活用への取り組みが具体的になってきたことで、潜在的な課題が表に出てきたものと推察されます。

 

(4)IoTで経営全体を刷新する意識を!

次にIoT技術の活用状況です。
ドイツが2011年に「Industrie 4.0」を打ち出してから、IoT技術によりスマートファクトリーの実現を目指す企業が世界中で増えました。業種別に見ると日米ともに製造業のIoT活用率が他業種に比べて高くなっています。
ただ、スマート「ファクトリー」と言っても、工場内にとどまらず、設計、開発、営業など他部門との連携を図っていくことが重要とされます。そのような方向性から米国製造業の「全社的に活用している」という回答率が31.2%と高い数値になっていると考えられます。しかし、同じ製造業でも日本企業では「全社的に活用している」が少なく、まだ経営全体を刷新するような活用はあまりされていないのではないでしょうか。

 

IoTの導入目的を見ると、「従業員の生産性向上」「業務プロセスの最適化」は日米ともに高いものの、「顧客の価値向上やロイヤリティ向上」「競合に対する競争優位性の獲得」は日本企業の数値が顕著に低くなっています。日本企業にとっては、IoT活用によって、提供サービスやビジネスを変革する意識を持つ余地がまだ残っていることを示唆しています。

 

まとめ

日本企業のデータ利活用技術の活用状況を見てみると、米国企業に比べれば進んでいないものの、着実に進んできていることが分かります。
しかし、多くの日本企業が、経営全体としての利活用には至っていないということも見て取れます。経営者がデータ利活用の基本を押さえた上で、それを前提とした経営の舵取りをしていくことが必要です。

参考コンテンツ
白書の第4部第1章「開発手法・技術」について、今回は紹介しませんでしたが、ITシステム開発における基本的な概念である「アジャイル」が白書全体を通して重要なものとして示されています。消費者のニーズを素早く具体化し、ITシステムを素早く開発し、素早くリリースするための基礎となる考え方です。IT支援力アップミニ講座では、この「アジャイル」を分かりやすく紹介する動画を公開していますので、是非、参考にしてください。

  • 動画「小さくはじめて大きく育てる(アジャイル入門編)」のイメージ画像
    小さくはじめて大きく育てる(アジャイル入門編)
  • 動画「小さくはじめて大きく育てる(アジャイル応用編)」のイメージ画像
    小さくはじめて大きく育てる(アジャイル応用編)

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