ITプラットフォームへ移動
特集

DX白書2021が発刊されました(1) ~日本のDX化には伸びしろがたくさん!

  • 2021年10月27日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 村上知也
  • DX白書2021
DX白書2021のイメージ画像

2021年に初めてのDX白書2021が発刊されました。以下のような内容構成となっております。
第1部 総論
第2部 DX戦略の策定と推進
第3部 デジタル時代の人材
第4部 DXを支える手法と技術
特集記事では、今後複数回に渡って、DX白書2021の内容を紹介していきます。

白書のタイトルとしては「日米比較調査にみるDXの戦略、人材、技術」となっており、全編において、日米比較がされています。以前より、米国のIT活用動向と日本のIT活用動向には大きな開きがありました。この30年で米国のIT投資は3倍になりましたが、日本は微減という有様でした。DXという視点ではどの程度開きが出ているのか確認していきます。

(1)DXの取組状況

まずはDXの取組状況のデータを見てみましょう。比較するまでもなく米国の企業の方が積極的に取り組んでいますが、業種による差も顕著です。全社的に取り組んでいる割合は情報や金融業界では日米の差は少ないものの、製造、流通、小売業では大きな差がついています。


 

さらに従業員規模別の取組状況を確認すると、1001人以上の大企業では大差がないものの、企業規模が小さいほど日米の格差が出ています。300人以下の日本の中小企業では、DXを全社的に取り組めている企業はわずか8.6%に過ぎません。


 

これらのデータから、日本では製造、流通・小売業において中小企業の割合が高く、中小企業のDX化が遅々として進んでいないことが予想されます。

なお、DXを進めていますか?と確認する場合は、DXの言葉の定義を回答者がどこまで正確に捉えているかによって変わってくる可能性があります。

経済産業省「『DX 推進指標』とそのガイダンス」によると、DXの定義は以下とされています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

デジタルを活用し、ビジネスモデルを変革し、競争優位を確立するという視点では、収益に直接つながるデジタル事業を展開しているかで大きな差がつくことが予想されます。

グラフは掲載しませんが、「デジタル事業の売上比率の把握状況」のデータを見ると、「デジタル事業を行っており、デジタル事業の売上比率を定量的に把握できている」割合は、米国では49.1%なのに対して、日本では10.5%に留まっています。ECを含めたデジタル事業全般への立ち遅れも目立ちます。

(2)外部環境の変化は機会!?

白書の第2部では、DX戦略の立案について解説されていますが、その際には外部環境をどのように捉えるのかが大事になります。

特に外部環境の変化に対する危機感の共有を経営者だけではなく、IT部門、業務部門が持っているかは、今後のDX進展のスピードに差をもたらします。さらにその危機感をチャンスとして捉えて行動に移していくことが求められるでしょう。

以下の「外部環境変化への機会としての認識」では、パンデミック、ディスラプター(既存の業界の秩序やビジネスモデルを破壊するプレイヤー)の出現、技術の発展、SDGsと全ての項目で、米国のほうが外部環境の変化を積極的に機会として捉えていることがわかります。


 

(3)まだまだアナログのまま!?

DXを実現する前に、業務の製造プロセスのデジタル化(デジタライゼーション)の段階があり、さらに、その前にアナログをやめて業務データをデジタル化(デジタイゼーション)の段階があります。

しかし、日本ではまだまだ紙文化が根強く、デジタル化が進んでいないことが、以下の「デジタイゼーションへの取組と成果」のグラフを見ると一目瞭然です。すでに十分にデジタル化の成果を出している企業が米国では56.7%なのに対して、日本では17.0%に留まっています。

DXに取り組む前に、紙やFAXといったアナログ文化を打破しないといけない状況にあると言えます。


 

(4)組織的に行えていない!?

DXは全社的な取り組みになりますが、日本では組織の壁が高く、経営者・IT部門・業務部門の協調が不足しているという結果になっています。


 

別のデータでは、米国のIT部門の内製化比率は高く、日本の内製化比率は低いと出ています。日本では社内にITを内製できる要員が少ないため、どうしてもアウトソーシングしがちです。外部との調整負荷も高まるため、IT部門が社内への影響力を発揮できていないケースが多くなっているように見受けられます。

そもそも、社内のIT部門の力がほか組織に比べて弱いこともあり、米国ではCDO(最高デジタル責任者)が64.5%存在するのに対して、日本では19.7%であり、DXを推進する体制がまだできていない企業が多いと考えられます。

まとめ

ITに関する諸外国と日本の比較データを見ると、いつも暗い気分になります。遅れている原因が、企業規模の小ささや、アナログ的な組織風土に起因しているとのアンケート結果が多いからです。
一方でDXの前にIT化が遅れている分、日本の中小企業には、伸びしろも大きいと言えます。
 
2021年の中小企業白書でもIT活用を進めるには組織風土や制度を変えるところからだと述べられています。DXに進んでいくためには、外部環境を踏まえ、アナログを打破しつつ、組織的に取り組んでいかねばなりません。

経営者の思い切った意思決定が求められています。

関連おすすめ