やってみよう!! ネットショップ開設の基礎知識【非対面型ビジネスモデルへの転換】
- 2020年7月21日
- 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 眞本崇之
- 非対面型ビジネスモデル
- BtoC EC

通販市場の成長、利用者の増加、また昨今の新型コロナウイルス感染症の影響もあり、補助金制度を活用してネットショップに取り組む事業者が増えています。
インターネット上で商品やサービスを売買するネットショップは、人の手を介さず、時間や場所を選ばずに販売ができるようになります。
ここでは、ネットショップ開設の基礎知識を解説します。
◯通販市場は成長が続く
2017年に通販(テレビ通販、ラジオ通販、カタログ通販、インターネット通販)の市場規模は10兆円を超え、2020年には12兆円に迫る、という調査データがあります。(富士経済「通販・e-コマースビジネスの実態と今後 2019」)なかでも、インターネット通販の成長は続いています。インターネット通販だけでも市場の8割以上を占め、2020年には10兆円規模に達すると予測されています。

インターネット通販の成長の要因には、取扱商品の拡充や利便性の向上、スマートフォン利用者の増加とSNS活用による販売、サービスの充実化や自動化などが挙げられます。
特に、スマホは、一人一台が当たり前となっています。生活の中でどこにいてもネットで買い物ができるため、今後もスマホ経由のネット通販が拡大していく傾向は続くと見込まれています
◯巣ごもり消費で、ネット通販の利用者が急増
昨今の新型コロナウイルス感染症での外出自粛要請などによって、店頭購入を控え、インターネットショッピングなどを使う機会が増えた方が多いのではないでしょうか。
総務省「家計消費状況調査」によると、2020年5月度のネットショッピング利用世帯(2人以上の世帯が対象)の割合が、初めての5割超えとなる50.5%となったデータがありました。

新型コロナウイルス感染症の影響で、実店舗での購買機会が減る深刻な事態に陥りました。そこで、多くの店舗がこの数ヶ月の間に、新たな事業展開として、インターネット通販に挑戦した店舗が増えています。
ここからアプリでも紹介しているBASE株式会社では、2020年3月下旬以降の新規アカウント開設数が急増し、70万ショップだった2019年2月、2020年7月には110万ショップを突破したということです。
◯実店舗販売とネットショップ販売の違い
実店舗では、お店を構えて(物件を契約)、商品を陳列してオープン。お客様に来店していただき、見て手にとって、レジで支払う、という流れとなります。
ネットショップでは、ショップ開設の登録、商品を掲載してオープン。お客様に閲覧していただき、注文を受けて、お客様宅へ配送する、という流れとなります。
ショップ開設の大まかな流れは同じですが、接客方法、時間、場所、サービスの視点から違いがありますので、メリット・デメリットを挙げてみましょう。

・ネットショップ販売のメリット
まず、インターネット通販のメリットとして挙げられるのは、
お店の営業時間に関わらず、24時間365日販売できる点、お店の所在地に関わらず、商圏を日本全国(世界)に拡大して販売できる点の2点です。
ネットショップはスタッフが接客をするわけではありませんので、労働時間に合わせて、お店を開けたり閉めたりする必要がありません。
・ネットショップ販売のデメリット
この記事では、ネットショップ開設をやってみよう!としていますが、しかし、デメリットもきちんと理解して取り組まなくてはなりません。

・接客の工夫
お店ではできるお客様への接客対応が、ネットショップではほとんどできません。したがって、お客様は商品ページに書かれた文章や写真、動画(最近はライブコマースという生放送動画での販売も増えてきています)で判断をして、購入していただかなくてはなりません。
商品ページで違いが出せない場合に、一番安いお店でしか買われないという価格競争に陥ってしまいます。
また、購入前に試着・試用できる実店舗とは異なり、実物に触ることができません。そのため、商品の欠陥だけでなく、「イメージが違う」といった購入者都合による返品が、実店舗に比べて多く、返品率が20%を超えるとも言われています。
「返品OK」のポリシーや、返品時の送料も無料にしている店舗もあり、安心して購入できるようになるので、新規顧客の獲得に繋げています。また、アパレル小売では、気になる商品を複数注文して、本当に気に入った商品以外は返品するようなスタイルも増えています。

・認知の工夫
ネットショップのメリットに「商圏が拡大する」と挙げました。しかし、現実には、顧客リストやSNSなどの見込み客リストをお持ちでない場合を除き、ネットショップを開設してすぐに、全国から購入されることはありません。ネットショップを作っただけでは、誰も見に来てくれない状況からスタートします。
ホームページ、ネットショップは星の数ほど存在しますので、ネットショップを開設したものの1度も見られないまま月日が流れる、ということもありえます。これまで接点のないお客様に、ネットショップを見つけてもらわなくてはなりません。実店舗での実績、知名度、取引顧客が多ければ、短時間での商圏拡大も期待できますが、まずはネットショップの存在自体を知っていただくための取り組みをしなくてはなりません。
モールはコスト面の負担が大きい、といったデメリットを記載しておりましたが、自社サイトでは、ネットショップへ呼び込むための集客を自分で行わなくてはならない点が最大のデメリットであると言えます。
◯ネットショップの種類と違い
実店舗を出店する場合、大きなショッピングモールのなかに出店する場合と、路面店に出店する場合の2パターンがあります。ネットショップでも同じように、モール型ショッピングサイトに出店するやり方と、自社サイトに構築するやり方があります。
・モール型ショッピングサイトに出店する場合
モール型ショッピングサイトとは、Amazonや楽天のようなショッピングサイトを指します。モール型ショッピングサイトに出店する場合、集客力が高く、たくさんのお客様が閲覧しているため、商品を並べるだけで検索されやすくなり、開設当初から購入に結びつく可能性があります。
そのぶん、初期費用や月額利用料、販売手数料などのコスト面の負担が大きくなる傾向があります。また、販売開始にあたり審査があり、開設までに時間がかかる、掲載内容にルールがある、モール独自で発行しているポイント(お客様に付与するお買い物ポイント)を負担することがある、と様々な制約を受けることがあります。また、同一商品の掲載店がある場合には、価格競争になりやすい点があります。
・自社サイトを構築する場合
まずは安く開設して始めてみたい、自分の会員だけに特別セールをしたい、独自ポイントを現金還元でない特典と交換させたい、のように、自社の都合にあわせて準備することができる点が自社サイトのメリットです。
特に、最近は、安く(無料〜)、すぐに(1〜2時間程度で)、自分でかんたんに(スマホだけで)ネットショップが作れます。
もちろん、自社の望む機能を開発して作り上げることも可能です。
ネットショップを構築するにも、様々なアプリ・サービスがあります。
選定をするにあたり、いくつかのポイントを掲載します。
・手数料の違い
ネットショップ選定でコスト面を気にされる方も多いと思います。最もコストのかからないやり方として、初期費用無料、クレジットカードなどの決済手数料だけでネットショップが開設できるサービスがあります。
ネットショップには、初期費用、月額利用料、決済手数料、販売手数料がかかります。
これらの手数料は、サービスやプランによってまちまちですので、選定の際に比較をしてみてください。
・決済の種類
利用するサービスによって、決済方法が決まっています。
ネットショップでは、クレジットカード決済が中心となっています。それ以外にも、お客様のなかには、コンビニ決済や代引き決済を選択したい方もいらっしゃいます。
また、モールでは独自ポイントを発行していることもあり、他店で獲得したポイントを当店で使っていただけるメリットがあります。
・販売オプションの種類
定期販売、予約販売、抽選販売、電子媒体のダウンロード販売、まとめ売り(セット販売による割引)、クーポンやメルマガの発行、インスタグラムとの連携など、様々な機能があります。取り扱う商品によって必要なオプションがあるか、確認をしてください。
・無料/有料での機能の違い
無料でネットショップを開設できるサービスもありますが、決済手数料が割高、掲載商品が◯個まで、といった制限がかかっていることが多くあります。お試しで始めるには、まずは無料プランのあるアプリを選択してみてはいかがでしょうか。
・ネットショップ開設と補助金活用
新型コロナウイルスの影響で、対面販売が減ってしまった小売業者、サービス業者からネットショップを開設したいという要望が増えています。2020年7 月現在、ネットショップ開設に活用できる補助金制度を簡単にご案内します。
◯IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等のみなさまが自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、みなさまの業務効率化・売上アップをサポートするものです。
ECサイト制作に関しても補助対象となっています。特に、コロナウィルス感染症が事業環境に与えた影響への具体的対策として、特別枠(C類型)が設けられ、補助率が3/4に引き上げられています。
◯小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、持続的な経営に向けた経営計画に基づく、小規模事業者等の地道な販路開拓等の取組や、あわせて行う業務効率化の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助する制度です。
コロナ特別対応型では、申請要件である「非対面型ビジネスモデルへの転換」に該当し、ネットショップ構築費用などに対して、100万円(補助率3/4)を上限に補助する制度です。
(2020年7 月現在)