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特集

「アプリの基本」〜もっとITを使おう

  • 2019年3月27日
  • 中小機構専門家 村上 知也

(1)ITの活用動向

IT活用していますか?日本の中小事業者はITの活用度が低いと言われています。小規模企業白書ので「ITツール・サービスの利用状況(経営者年齢別)」を確認すると、メールやオフィス、ホームページくらいまでは活用が進んでいます。
しかし、インターネットバンキングや、クラウドサービスの活用となると急激に利用率が低くなります。 とくに年齢層の高い経営者の会社はIT活用があまり進んでいません。

ITツール・サービス利用状況グラフ
出典 小規模企業白書 2018年版

それでは何のためにITを活用するのでしょうか?もちろん業績を向上させるためにITを活用すると思います。次のグラフは小規模企業白書に掲載されている、ITを導入したら売上は変わったのかをアンケートにまとめた結果です

直近3年間の売上高の傾向グラフ
出典 小規模企業白書 2018年版

アンケートの結果は、間接業務のIT導入が進んでいる企業ほど、売上は増加傾向にあるといえるでしょう。もちろん、業績が好調だからIT投資する余裕があったとも読めます。しかし、手間のかかる間接業務をITによる効率化を果たしたからこそ、売上を向上させる活動に時間を確保できるようになったのではないでしょうか。

(2)なぜアプリなどのITを活用しない?

無料や安価でビジネスに活用できるアプリは増えています。このサイトでも多数のアプリを紹介しています。

IT活用に消極的な事業者に多いのは、全くITに興味がないというケースや、過去にIT投資で失敗したというケースがあります。慎重に選定して進めても導入で失敗してしまい、多額のIT投資をしても何も残らなかったという場合です。高額な機械設備と同様に一度買うことになれば必ず大きな投資が発生するので、失敗したときの出血も多いわけです。

確かに一昔前のIT投資はおおごとでした。◯◯システムを導入しようと思い立つと、まずIT会社を探さねばなりません。該当しそうなシステム会社を複数探して、システムの概要を説明してもらい、自社で活用できそうであれば、デモ機を持ってきてもらって実際に動作を見せてもらいます。そして導入の意思決定をしたら、数百万円のコストが発生していたわけです。後戻りはできません。

(2−1)無料もしくは安価にITを試すことができるようになっている

しかし、時代は変わってきました。クラウドサービスの登場により、ITは設備ではなくサービスになりました。サービスになるとどう変わるか?月額制になっているところが多いです。5年リースで何百万としていたIT投資が、月々1万円からといった価格帯に変わりつつあります。

もちろん月額1万円も安くはありませんが、失敗したときの出血は少ないです。数ヶ月使ってダメであればそこで利用停止をすれば、それ以上の支払いは発生しません。使っていないのに残ったリースだけ払っているなんてことにはなりません。

さらに、多くのITサービスは1ヶ月無料体験の試用期間がついています。まず使ってみるという機会は提供されているのです。1ヶ月あれば自社の業務に適合しているのか検証することができるのではないでしょうか?

なお、月々◯万円というサービス料ですが、提供元によっては年額払いになっているケースもありますので、確認してから契約するようにしましょう。

(2−2)ITを活用しないと世界は広がらない

ただし、IT活用の提案を経営者の方にしても、「興味がない」「わからない」「息子が継いだタイミングで考える」といった後ろ向きな答えをいただくことも結構あります。

個人的にはもったいない、と思います。

検討した上で、IT化の必要はないと判断するのはあってしかるべきです。しかし、業務の効率化のためにITが使えるか考えもしないのは、本当にもったいないです。

もちろんITが苦手な方にとっては検討するのが大変だと思いますが、ITが何に使えるか知らないことには前に進みません。

「へー。こんな事ができるんだ!」と気づくことで活用につながるのではないでしょうか。例えば便利な工具の存在を知れば使ってみたくなりませんか?でも工具の存在を知らないままだといつまでの旧式の工具を使い続けて、効率が上がらないなんてことになります。ITを知らないままでやり過ごしていませんか?

ITを使えば世界は広がる!というのは言いすぎかもしれません。

80代プログラマーで有名になった若宮正子さんをご存知でしょうか?国連で演説したり、AppleのCEOと対談したりとテレビにも多数登場されていました。若宮さんは昔からITが得意だったわけではなく、定年後母親の介護にかかりっきりになり、外の世界とのつながりが欲しくてパソコンを購入され、そこからスマホアプリの開発を実現するまでになりました。

インターネットを活用して外の世界とつながることで、「ああ、私は60にして翼を手に入れたんだ!」とインタビューの中で語っておられます。

もう自分はITのことはわからないから、使わない!というのは損をしています。何歳からでも学んで活用することは可能だと思いますので、ぜひITを苦手だという方にも挑戦して欲しいです。

(3)一人で使う場合

挑戦すると言っても大げさな話ではなく、まず、一人でITを活用して、効率化を図り、自分自身の生産性向上につなげてみてはどうでしょうか。

時間がかかって困るなあという作業を効率化できればご自身の時間的余裕が確保できます。そうすると付加価値のある仕事に取り組むことができます。

私の場合でいうと、初めて経理をして確定申告をしたときには、こんな大変なんだと辟易しました。最初は、エクセルと、国税のシステムを使っていました。それが、2年目以降、クラウドの会計サービスを導入すると、作業負荷は大幅に下がりました。いまでは、12月が終わった直後には、ほとんどの確定申告の作業は終わっています。

余裕を持って3月も仕事をすることができるわけです。

(4)会社のみんなで使う場合

 ここまで、まず試して使ってみよう!ということをお伝えしてきましたが、IT活用の規模が大きくなると事前の準備も大切です。一人であれば自分だけで決められたことも、複数人で使う場合には、全員が使い方を覚えないといけませんし、役割分担も決めないといけないでしょう。

 場当たり的に使い始めるより、事前に整理して、何を解決しないといけないのか目的を明確にしてからシステム導入をしたいです。

◯システム導入の進め方
 一般的には以下のように手順を踏んでシステム化をすすめたいです。

現状の業務の確認
 → 問題点の抽出
  →どこを変更すると業務効率が上がるのか考える(あるべき姿)
   →達成すべき課題を明確にする
    →実行スケジュールの明確化

システム化のイメージ図

目的を明確にしないとシステム導入は失敗しがちです。たとえばエクセルでやっていた作業をシステム化しても、実際にエクセルを使っていた担当者の効率化になるとは限りません。エクセルが得意な担当者にとっては、システムを使うよりエクセルを使うほうが速いから、システムを導入したくない、と言うかもしれません。

しかしエクセルで作ったファイルを他の社員も閲覧して、同時編集したりするなら、システム活用した方が効率的でしょう。
担当者一人の効率化ではなく、会社全体として効率化できるなら、システム化は進めるべきだと言えます。

重要なのは、事前にシステム関連する社員を含め目的を共有して、このシステム化は必然のものなんだと説明して理解してもらうことです。目的や問題点などは事前に紙に書き出して共有し、導入前の納得度合いを高めておきましょう。

まとめ

中小企業、とくに小規模事業者のIT活用は進んでいません。確かに数年前まではITの導入コストなどのハードルは高かったでしょう。しかし、クラウド化などの進展でIT導入の難易度とコストは下がってきています。

ITは興味ない!IT投資は過去に失敗したからこりごり!と言わずに、この機会にIT活用の挑戦をしてほしいと思います。

本Webサイトには、分野ごとに多数の有効なITアプリが並んでいます。きっと自社にあったアプリもあるはずなので、一度試してほしいと思います。

ITへの挑戦が会社の翼をひろげてくれるはずです。